警察の証拠保管室に置かれた呪われた黒電話
Evidence / Police Report

警察報告書

報告書に書けないものほど、
報告書に残っていた。

所轄署 証拠保管室 黒川刑事 証拠品317

その電話は、
押収された後も、
鳴った。

警察報告書 / Phone.co.jp
Report Summary

報告概要

黒電話は、山の上の貸家から回収され、所轄署の証拠保管室へ移された。 物品としては旧式回転式電話機。メーカー不明。製造番号判読不能。 配線は切断され、受話器は封印された。

当初、警察は玲奈の通報を、深夜の混乱による誤認、あるいは不審物発見として処理しようとした。 貸家に置かれていた黒電話は古いが、見た目には危険物ではない。 爆発物、盗聴器、通信装置としての異常も、その場では確認されなかった。

しかし、問題は電話そのものではなく、電話が置かれていた状況だった。 家に電話線はない。玲奈はその電話を持ち込んでいない。 不動産業者も、前の入居者も、室内備品として黒電話を確認していない。

そして最大の異常は、押収後に発生した。証拠保管室で封印されていた黒電話が、 午前三時十七分、録音装置にベル音を残したのである。

報告書では、この出来事は「音源不明の環境音」として記録された。 しかし黒川刑事の私的メモには、別の言葉が残っていた。

「あれは環境音ではない。電話が鳴っていた」
Official Record

報告書抜粋

以下は、物語内に残された警察報告書の抜粋として構成した記録である。 公的文書の硬い言葉と、そこから漏れる恐怖の差が、このページの中心になる。

報告書番号 317-P / 抜粋

項目 記載内容 備考
発見場所 山間部所在の木造貸家一階居間 電話線設備なし
通報者 水原玲奈 深夜に電話音を聴取したと証言
押収物 旧式回転式電話機一台 黒色、メーカー不明
登録番号 証拠品317 証拠保管室第三棚へ保管
配線状態 接続線なし。内部線一部切断。 通話機能確認不能
指紋 有効指紋検出なし 通報者の指紋も不検出
異常記録 保管中、録音装置にベル音を記録 03:17 a.m.
処理 音源不明の環境音として別紙記録 担当者判断により再調査
証拠品317として保管棚に置かれた黒電話
Evidence Room

封印された電話が、保管室で鳴った。

棚は施錠されていた。受話器は封印されていた。コードは切断されていた。 それでも録音装置には、金属ベルの音が残っていた。 その時刻は、午前三時十七分だった。

Investigator Notes

黒川刑事のメモ

公式報告書には残せない言葉が、担当刑事の私的メモに残されていた。 それは捜査資料というより、眠れなくなった人間の独白に近い。

メモ 01

通報者は混乱していたが、嘘をついているようには見えなかった。 恐怖を説明しようとする人間の言葉は崩れる。 だが、彼女の言葉は一箇所だけ崩れなかった。

「私の声だった」

メモ 02

押収した電話機に発信機能は確認できない。 にもかかわらず、保管室内でベル音が記録された。 防犯映像に人影なし。棚の封印破損なし。

音だけが、棚の中から出ている。

メモ 03

音源不明と書くしかない。だが、自分の耳では聞いている。 あれは環境音ではない。電話が鳴っていた。

問題は、電話が誰を呼んでいたのかだ。

メモ 04

午前三時十七分以降、内線電話を見るのが嫌になった。 鳴っていない電話ほど気になる。

もし鳴ったら、自分は出るのか。出ないのか。

Incident Entry

保管室内異常音記録

証拠保管室の録音装置に残された記録は短い。 しかし、報告書上もっとも重要な異常はここにある。

317-P-04 / 保管室録音

03:16:58 環境音。換気装置低音。
03:17:00 金属ベル音開始。
03:17:04 ベル音継続。棚方向。
03:17:11 録音レベル上昇。音源距離不明。
03:17:18 ベル音停止。
03:17:19 無音。
03:17:37 低い呼吸音。
03:17:41 不明音声。判読不能。
03:17:43 記録ノイズ増大。
03:17:44 録音停止。

公式報告書では、音声部分は「判読不能」と処理された。 しかし黒川刑事の手書きメモには、該当箇所に赤線が引かれ、次の言葉が添えられていた。

「出るな、と聞こえる」
Contradictions

報告書の矛盾

公式な形式に収めようとすればするほど、記録は矛盾を増やしていく。 その矛盾こそが、黒電話の存在を浮かび上がらせる。

押収前に写真がある

証拠写真の一部に、押収日時より前のタイムスタンプが残っている。 撮影者欄は空白。写真には貸家の居間ではなく、証拠保管室の棚が写っていた。

封印紙が古くなる

保管時に新しく貼られた封印紙が、翌朝には数年経過したように黄ばんでいた。 ただし破損はなく、貼替の形跡もない。

指紋が残らない

通報者、担当刑事、鑑識担当者が触れたはずの場所にも有効指紋が検出されない。 表面は汚れているのに、指紋だけがない。

音の距離が変わる

録音上、ベル音は棚の奥から始まる。 しかし数秒後には、マイクの直近で鳴っているようなレベルに変化している。

映像に映らない瞬間

防犯映像では、午前三時十七分の前後だけノイズが増える。 完全な欠落ではない。棚は映っている。電話だけが、見えにくくなる。

担当者が同じ夢を見る

黒電話を扱った複数の担当者が、古い家で電話が鳴る夢を見ている。 報告書には記載されていないが、聞き取りメモには残っている。

Report Path

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報告書は、
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これは、開いてしまった。

警察報告書 / File 317-P