証拠品317として保管棚に置かれた黒電話
Evidence / Item 317

証拠品317

黒電話。
破損なし。
指紋なし。
説明なし。

旧式回転式電話機 封印済み 指紋不検出 03:17 a.m.

棚に入れた。
鍵をかけた。
それでも、鳴った。

証拠品317 / Phone.co.jp
Object Summary

物品概要

証拠品317は、山の上の貸家から押収された旧式回転式電話機である。 黒色。重量は通常の同型機より重く、製造番号は判読不能。 外見上は古い黒電話にすぎないが、押収後の記録は通常の物品として扱うことを困難にした。

黒電話は、玲奈の通報後、貸家一階の居間から回収された。 回収時、電話機の周囲には電話線、接続端子、電源装置、通信機器の類は確認されていない。 本体後部には短いコードがあったが、どこにも接続されていなかった。

回収担当者は、受話器が異常に冷たかったと証言している。 ただし、物品温度測定は行われていない。報告書には「室温との差異あり」とのみ記載された。

署へ移送後、黒電話は証拠品317として登録された。 受話器は紙で包まれ、封印紙が貼られ、金属棚の奥へ保管された。 棚は施錠され、保管室の入退室記録にも異常はなかった。

しかし三日後、午前三時十七分、保管室の録音装置にベル音が残った。 防犯映像に人影はなく、棚の封印も破れていなかった。

証拠品317。
旧式回転式電話機。
保管中、音源不明のベル音を記録。
Property Sheet

証拠品台帳

台帳上、証拠品317は単なる物品として登録されている。 だが、備考欄に残された短い記述が、その後の異常を示している。

物品台帳 / Item 317

項目 記録 備考
登録番号 317 山の貸家事案関連物品
分類 旧式回転式電話機 黒色、卓上型
発見場所 木造貸家一階居間 畳中央部
所有者 不明 通報者は所有を否定
製造番号 判読不能 削られた痕跡あり
配線 外部接続なし 内部線一部切断
指紋 有効指紋不検出 通報者、担当者とも不検出
状態 破損なし 破損証言との不一致あり
保管場所 証拠保管室第三棚 封印処理済み
異常記録 保管中ベル音を記録 03:17 a.m.
冷たい光を受ける黒い回転式電話の接写
Physical Detail

電話の形をしている。だが、電話ではない。

丸いダイヤル。重い受話器。黒い樹脂の表面。 すべてが電話として説明できる。だが、説明できるのは形だけである。 鳴る理由、戻る理由、声を残す理由は、どこにも記録されていない。

Observed Anomalies

確認された異常

証拠品317の異常は、派手な怪奇現象としてではなく、記録の矛盾として現れる。 その矛盾が積み重なるほど、黒電話は物品ではなく事件そのものに近づいていく。

指紋が残らない

玲奈、回収担当者、鑑識担当者が触れたにもかかわらず、有効指紋は検出されていない。 表面には傷や汚れがあるが、指紋だけが消えている。

破損が戻る

玲奈は台所で金槌を使って黒電話を破損させたと証言している。 しかし押収時、電話機本体には破損がなかった。 黒い破片だけが別袋で発見された。

受話器が冷たい

複数の証言者が、受話器の異常な冷たさを述べている。 室温、保管場所、時間帯に関係なく、最初に触れた者は必ず冷たさを記録している。

封印紙が古くなる

新しく貼られた封印紙が、翌朝には数年経過したように黄ばんでいた。 破損や貼替は確認されていない。

録音装置に音を残す

配線を切断され、受話器を封印された状態でも、保管室の録音装置にはベル音が残った。 音源位置は棚の奥から始まり、数秒後にはマイク直近に変化している。

番号を覚えさせる

関係者の一部は、7317317という数字を繰り返し思い出す。 その番号をどこで見たのか、いつ聞いたのかは、本人にも説明できない。

Storage Incident

保管室内事案

証拠品317の保管中、最も重要な記録は午前三時十七分のベル音である。 この時点で、黒電話は通信機器ではなく、説明不能な証拠物として再分類される。

保管室記録 / 317-S

03:16:58 保管室内環境音。
03:17:00 金属ベル音。第三棚方向。
03:17:04 ベル音継続。棚施錠状態。
03:17:11 音量上昇。録音距離と不一致。
03:17:18 ベル音停止。
03:17:19 無音。
03:17:37 呼吸音。音源不明。
03:17:41 判読不能音声。
03:17:44 録音停止。

防犯映像では、保管室に人影は確認されていない。 ただし、午前三時十七分の前後だけ、第三棚の周辺に映像ノイズが集中している。

Object History

証拠品317の移動記録

物品台帳に残る移動記録は単純である。 しかし、証言と照合すると、電話は台帳に記録される前から保管室に存在していた可能性がある。

移動履歴

順序 場所 処理 異常
01 山の貸家・居間 通報者が発見 電話線なしで鳴動
02 山の貸家・台所 同一物と推定 居間から消失、台所で再出現
03 貸家玄関外 証言のみ 本体不明、受話器のみ確認
04 所轄署 証拠品317として登録 指紋不検出
05 証拠保管室第三棚 封印保管 保管中にベル音記録
06 不明 記録欠落 病院、モーテルで同型電話の出現報告
黒電話の細部とコードの影
The Cord

コードは、切断されていた。

切断されたコードは、通信を不可能にするはずだった。 しかし黒電話の場合、コードはつなぐためではなく、引きずり込むためのものだった。 玲奈は最後に、そのコードを引き抜いた。

Investigator Note

黒川刑事の追記

証拠品317の台帳末尾には、正式な報告文とは異なる短い追記が残されている。 それは事実の記録というより、警告に近い。

非公式追記

この電話を物品として扱うことはできない。
物品は鳴らない。
物品は待たない。
物品は、こちらが忘れていたことを知っていない。

もし保管室で再び鳴った場合、誰も受話器に触れてはならない。
鳴っている場所を確認してはならない。
誰の声が聞こえても、返事をしてはならない。
Evidence Path

証拠品317から読む関連ページ

黒電話を中心に読むと、事件の全体像が最もはっきり見える。

証拠品317は、
棚の中にあった。
だが、電話の向こう側は、
まだ開いていた。

証拠品317 / File 317