ダイヤル
数字を押すのではなく、回す。 その重さと戻る音が、番号を手に覚えさせる。 7317317という数字は、音として記憶に残る。
冷たい受話器。
戻る場所のないコード。
電話は、
誰かに使われる道具ではない。
誰かを選ぶものだった。
『電話』の中心にあるのは、古い黒電話である。 それは怪物の姿をしていない。叫ばない。歩かない。人を追いかけない。 ただ鳴る。そして、人が出るまで待つ。
黒電話は、どこにもつながっていない。 それなのに鳴る。壊しても戻る。封印されても録音に残る。 指紋は検出されず、製造番号は削られている。
このギャラリーでは、電話そのもの、受話器、コード、証拠品317として保管された姿を並べる。 物語を読んだ後に見ると、単なる電話の形が、だんだん入口に見えてくる。
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細部は、物語の中で何度も意味を変える。 ダイヤルは番号を覚えさせ、コードは向こう側へ伸び、受話器は声を閉じ込める。
数字を押すのではなく、回す。 その重さと戻る音が、番号を手に覚えさせる。 7317317という数字は、音として記憶に残る。
どの証言にも、受話器が冷たいという記録がある。 室温に関係なく、最初に触れた者は必ず同じ冷たさを語る。
短く切断されているはずのコードが、鏡の中で伸びる。 最後に玲奈が引き抜いたのも、このコードだった。
傷や汚れはある。だが指紋はない。 誰かが触れた証拠だけが、電話の表面から消えている。
音は大きくない。けれど一度気づくと、部屋のどこにいても同じ距離で聞こえる。 耳ではなく、骨に届く音である。
壊したはずの電話は元に戻る。 しかし破片だけは残る。壊れた事実と、壊れていない現物が同じ場所に存在する。