悲鳴の録音波形と書き起こし資料
Evidence / Audio Transcript

録音書き起こし

十八秒の無音。
その後、呼吸音。
そして、悲鳴。

音声記録 03:17 a.m. 声紋不一致 出ないで

録音には、
声が残っていた。
でも、誰の声かは残らなかった。

録音書き起こし / Phone.co.jp
Audio Summary

音声記録の概要

黒電話に関する録音は、完全な形では残されていない。 どの記録にも欠落、ノイズ、音量の急変、時刻のずれがある。 しかし複数の録音には、同じ構造が確認されている。

最初はベル音。次に、受話器を取るような摩擦音。 その後、長い無音が続く。平均して十八秒前後。 この無音の間、録音装置には環境音がほとんど入っていない。

無音の後、呼吸音が現れる。 一人の呼吸のように聞こえるが、波形を重ねると複数の息が混じっている。 そのうち一つは、受話者本人の呼吸と似ている。

次に悲鳴。女性の声と記録されているが、聞いた人間によって証言が異なる。 ある者は子どもの声だと言い、ある者は老人の声だと言い、 ある者は「自分の声だった」と言う。

そして、多くの録音の最後に、短い言葉が残る。

出ないで。
Primary Transcript

主要録音書き起こし

以下は、病院記録、警察保管室記録、玲奈のスマートフォンに残された断片を照合し、 物語内資料として再構成した音声ログである。

音声資料 317-A / 統合書き起こし

03:17:00 金属ベル音。距離不明。
03:17:04 ベル音継続。音量変化なし。
03:17:11 足音のような低周波。
03:17:18 受話器を持ち上げる摩擦音。
03:17:19 ベル音停止。
03:17:20 無音。
03:17:25 無音継続。環境音なし。
03:17:31 無音継続。録音レベル微増。
03:17:38 呼吸音。近距離。
03:17:41 呼吸音、二重化。
03:17:44 遠方落下音。材質不明。
03:17:46 悲鳴。女性。音源距離判定不能。
03:17:52 悲鳴継続。波形重複。
03:17:57 低い声。判読困難。
03:17:59 声:「……ないで」
03:18:01 声:「出ないで」
03:18:02 録音停止。通話終了音なし。
暗闇の中で歪む悲鳴の顔
The Scream

悲鳴は、一つではなかった。

録音上は一人の声に聞こえる。 しかし波形を分解すると、複数の声が同じ瞬間に重なっている。 その中心にある声は、電話を取った本人にもっとも近い。

Audio Pattern

録音に共通する六つの段階

複数の記録を比較すると、黒電話の音声には一定の流れがある。 それは通話というより、儀式に近い。

一、ベル音

金属ベルの古い音。音量は大きくないが、録音機との距離に関係なく同じ大きさで残る。 音源位置の特定はできない。

二、摩擦音

受話器を持ち上げるような音が記録される。 ただし、証拠保管室の録音では、受話器は封印されたままだった。

三、無音

平均十八秒前後の無音。環境音が消え、録音レベルだけがわずかに上がる。 この部分を聞いた者は耳の奥に圧迫感を訴える。

四、呼吸音

一人の呼吸に聞こえるが、分析上は複数の呼吸が重なっている。 受話者本人の呼吸に近い成分が含まれる場合がある。

五、悲鳴

最も大きな音声成分。聞き手によって声の年齢や性別が変わって聞こえる。 一部記録では、受話者本人の声紋と近似する。

六、短い言葉

悲鳴の後に残る一言。「出ないで」が最も多い。 ただし、「まだ」「かわって」「帰りなさい」と聞こえる断片もある。

Separate Files

個別録音断片

記録ごとに、聞こえる言葉が少しずつ違う。 ここに、黒電話が「相手に合わせて声を変えている」可能性が現れる。

貸家 / 玲奈証言

ベル音。
「もしもし」
無音。
落下音。
悲鳴。
「出ないで」

録音は残っていない。だが後の音声記録と構造が一致している。

証拠保管室 / 録音装置

ベル音。
無音。
呼吸音。
判読不能。
「出るな」または「出ないで」

公式記録では「音源不明の環境音」。担当刑事のメモには赤線が残る。

病院 / 無人病室

ベル音。
無人病室内環境音。
摩擦音。
呼吸音、複数。
悲鳴。
「……ないで」

電話機のない病室で録音された。看護師は病室内に誰もいなかったと証言。

スマートフォン / 留守番電話

金槌が床に落ちる音。
「壊しても、戻るよ」
ノイズ。
「三回目で、私になる」

発信元不明。通信会社側の履歴なし。画面には午前三時十七分と表示。

Voice Notes

声についての分析メモ

科学的な分析では説明できない部分ほど、証言としては強く残っている。

音声分析メモ / File 317-A

項目 記録 異常点
ベル音 旧式電話の金属ベルに類似 音源距離が変化しない
無音部 約十八秒 環境音まで消える
呼吸音 複数波形の重なり 一部が受話者本人と近似
悲鳴 高音域に強い歪み 聞き手により声の認識が変化
言葉 「出ないで」ほか 録音ごとに意味が変わる
終了音 通話終了音なし 録音だけが突然停止
鏡の中で黒電話と向き合う女性
Warning Phrase

「出ないで」は、誰に向けられた言葉なのか。

それは電話を取ろうとする者への警告にも聞こえる。 だが、すでに電話に出た者の後悔にも聞こえる。 録音は答えを残していない。ただ同じ言葉だけを繰り返す。

Recovered Fragment

復元断片

音声資料のノイズ部分から復元されたとされる断片。 公式報告書には採用されていないが、黒川刑事のメモにはこの断片が残っている。

非公式復元 / 317-A-R

ざざ……
ざざざ……
「聞いて」
ざざ……
「一回目は、出てもいい」
ざざざ……
「二回目は、だめ」
ざざ……
「三回目は、もう向こうにいる」
ざざ……
「番号を覚えないで」
ざざざ……
「覚えたら、かけられる」
ざざ……
「かけたら、向こうが覚える」

この断片の信頼性は不明である。 ただし、後に玲奈が証言した内容と一致する箇所が複数存在する。

Evidence Path

録音から読む関連ページ

音声記録は、黒電話の事件の中心にある。着信記録、警察報告書、悲鳴の解説と合わせて読むと、構造が見えてくる。

録音を止めても、
声は止まらなかった。
聞いた人間の中で続いた。

録音書き起こし / File 317-A