一、物語として読む
まずは「序章」から「終章」まで順番に読む。 玲奈の恐怖、記憶、後悔が段階的に開いていきます。
電話は、
物語の外から鳴っていた。
だから、読者にも聞こえる。
山の上の古い貸家に越してきた水原玲奈は、午前三時十七分、 あるはずのない黒電話の音で目を覚ます。電話線はない。契約もない。 昨日まで、そこに電話はなかった。
受話器を取った瞬間、玲奈は電話の向こうで悲鳴を聞く。 最初は見知らぬ女の声だと思った。けれど、それは彼女自身の声だった。 まだ叫んでいない自分。これから叫ぶはずの自分。あるいは、もう戻れない場所にいる自分。
黒電話は壊しても戻る。居間から台所へ、鏡の中へ、スマートフォンの録音へ、そして祖母の家の記憶へ。 電話は場所を移動するのではない。人間の後悔に沿って現れる。
これは、怪異と戦う物語ではない。出なかった電話を悔やみ続ける人間が、 もう一度「出るか、出ないか」を選ばされる物語である。
最初から読むと、電話の正体が少しずつ変わっていきます。 道具、怪異、記録、記憶、そして後悔へ。